日常動作が難しくなることも…
また、肉類の控えすぎはサルコペニアという状態を招くこともわかっています。
サルコペニアというのは、筋肉量と筋力が一定量以下になり、立ち上がりや歩行など、日常生活に欠かせない動作が難しくなる状態です。
75歳以上の人で2割を超える人がサルコペニアという推計もあり、日常生活で頻繁につまずくようになったり、立ち上がるときに手をつくことが多くなったという人は、肉類の摂取不足が考えられます。
さらに、肉類を控えていると、脳の働きまで悪くなる可能性があります。
やる気の源になるアセチルコリンという脳内物質は、動物の組織、つまり、牛肉、羊肉、豚肉などに含まれているコリンから生成されます。
肉類を控えていると十分な量のアセチルコリンが生成できなくなり、やる気を失ってしまうというわけですね。
保坂隆さんの連載「人生を楽しむ ほどほど老後術」一覧
出典=『精神科医が教える 人生を楽しむ ほどほど老後術』(著:保坂隆/中央公論新社)
保坂隆
保坂サイコオンコロジー・クリニック院長
1952年山梨県生まれ。慶應義塾大学医学部卒業後、同大学精神神経科入局。1990年より2年間、米国カリフォルニア大学へ留学。東海大学医学部教授(精神医学)、聖路加国際病院リエゾンセンター長・精神腫瘍科部長、聖路加国際大学臨床教授を経て、現職。また実際に仏門に入るなど仏教に造詣が深い。
著書に『精神科医が教える お金をかけない「老後の楽しみ方」』(PHP研究所)、『精神科医が教える 繊細な人の仕事・人間関係がうまくいく方法』(三笠書房)、『精神科医が教える すりへらない心のつくり方』(以上、大和書房)、『頭がいい人、悪い人の老後習慣』(朝日新聞出版)、『精神科医がたどりついた「孤独力」からのすすめ』(さくら舎)などがある。