『リング』『呪怨』に代表されるように、日本ではこれまで数多くのホラー映画が製作されてきました。こうした「Jホラー」について、開志専門職大学助教・鈴木潤先生は、「ビデオ、映画、テレビ、動画共有サイトなど、いくつものメディアを渡り歩き、重層的に歴史を紡ぎ続けている」と語ります。今回は、鈴木先生の著書『Jホラーの核心: 女性、フェイク、呪いのビデオ』から一部を抜粋し、お届けします。
主役はキャラではなく、家──『呪怨』シリーズ(2000~)
2000年に東映ビデオからオリジナルビデオ(東映Vシネマ)として発売された『呪怨』は、2003年には劇場版、2004年にはハリウッドリメイク版、そして2020年にNetflixオリジナルドラマ版『呪怨:呪いの家』〔監督:三宅唱〕が公開されるなど、時代の変化に合わせていくつものメディアでシリーズ展開がなされてきた。
このうち、とくに「ビデオから映画(邦画)へ、そしてハリウッドへ」という流れは、『邪願霊』〔1988年〕に端を発するJホラーの歴史そのものを体現していると言える。『呪怨』は、Jホラーのシンデレラストーリーを歩んできた作品なのだ。
登場する幽霊に注目してみても、『呪怨』の伽椰子・俊雄親子は『リング』の貞子と並ぶ大スターだと言っていいだろう。
余談だが、筆者が勤務する大学で「Jホラーを研究している」と自己紹介をすると、「Jホラーって何?」と頭にハテナを浮かべる学生(2000年代半ば生まれ)がそれなりにいるのだが、『呪怨』と『リング』のタイトルを挙げると、「あぁ、ああいう映画か」と頷いてくれることが多い。