伽椰子・俊雄親子の死と「呪いの家」誕生の背景
また、ハリウッド版第二作である『呪怨 パンデミック』〔2006年、監督:清水崇〕では、友人たちとの肝試しで「呪いの家」に入ってしまったインターナショナルスクールの女子高生・アリソン〔演:アリエル・ケベル〕に取り憑いて、伽椰子・俊雄親子は渡米(!)することとなる。
ここで興味深いのは、アリソンの実家が集合住宅であるという点だ。アリソン一家の隣部屋に住むジェイク〔演:マシュー・ナイト〕一家も、はるか遠く日本から輸入された「呪い」に巻き込まれ、やがてアパート全体が「呪いの家」へと変貌してしまう。伽椰子たち親子は、「呪いの家」に立ち入った者を呪い殺すためならば、太平洋をも易々と渡ってみせるパワフルな存在なのである。
このように強烈な個性と存在感を放つ伽椰子・俊雄親子だが、彼らの死と「呪いの家」誕生の背景には、後に「呪いの家」となるあの一軒家に住んでいた佐伯一家のすれ違いの悲劇がある。
伽椰子は、彼女の浮気を疑った夫・剛雄によって殺害される。その原因は、「妊娠」をめぐる夫婦の問題に他ならない。夫婦の一人息子・俊雄の誕生後、伽椰子がなかなか二人目の子どもを妊娠しないことをきっかけに、剛雄は不妊の原因が自分自身の体質にあることを知る。
そして折り悪く、伽椰子が大学時代の同級生・小林俊介〔演:柳ユーレイ〕に異常なまでの執着を抱いていたことを記したノートを見つけ、俊雄を不義の子であると思い込んで凶行に及んでしまうのだ。
伽椰子・俊雄親子が怨霊となり、呪いをまき散らす恐ろしい存在となった発端には、ごくありふれた夫婦の、どこの家庭でも起こりうる家族のすれ違いがあったのである。