2025年度大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)。日本のメディア産業・ポップカルチャーの礎を築き、時にお上に目を付けられても面白さを追求し続けた人物〈蔦重〉こと蔦屋重三郎の波乱万丈の生涯を描いたドラマも12月14日の放送で最終回を迎えます。そこでクランクアップ後の感想を、天才絵師・喜多川歌麿を演じた俳優・染谷将太さんに伺いました。(取材・文:婦人公論.jp編集部 吉岡宏)
「いかねぇで」は自分の気持ちそのもの
妻・きよとの別れは、やはり一番衝撃を受けた場面だったのかもしれません。
藤間爽子さん演じるきよの登場回は少なかったからこそ、1つ1つの場面が濃かったですし、明確に感情が表れやすい作りになっていました。実際、二人は本当に幸せそうで、楽しそうでしたよね。
それが病を経て、だんだん苦しんでいく。そこだけをかいつまんでも、ちょっとした短編ドラマになるような、そんな流れだったので…。
加えて二人のやりとりは、わりと順を追って収録できたので、シンプルに目の前で起きることに反応していくだけで成立していった、という印象があります。
それだけにより辛かったというか、台本を読んだだけで涙がこぼれました。
役柄的に、藤間さんにはほとんどセリフがありませんでした。だからこそ本当に感情豊かに、動きと表情で表現されていて。
強く心が動かされましたし、おきよさんにすがって「いかねぇで」と歌麿が懇願するセリフは、まさに自分の気持ちそのものでした。