(写真提供:Photo AC)
近年、国や地域別の幸福度ランキングや「ウェルビーイング」という言葉が注目を集めています。この「幸福」というテーマについて、京都大学人と社会の未来研究院の内田由紀子教授は「自分たちが生きている文化・社会環境におけるウェルビーイングとは何かを問い、データを適切に解釈すべき」と語ります。今回は、内田教授が国際比較を通して日本社会における幸せの特徴を探った著書『日本人の幸せ―ウェルビーイングの国際比較』から一部を抜粋してお届けします。

幸せの統計学

日ごろの暮らしの中で、皆さんはどのような時に幸せを感じますか。

そもそも、幸せとは一体どういうものでしょうか。多くの人が重要だと考えている要因は、健康や経済状態、友人との付き合い、あるいは毎日の楽しみです。もちろんそれぞれがどれぐらい大事かというのは個人の価値観や状況によっても違います。

元気な時にはあまり健康については考えずに「お金がもっとあったらなあ」などと願ったりします。しかし病気になったとたん健康のありがたさに気がつく、という場合もあるでしょう。人はその時に「足りない」ものが充足すれば幸せになれるのではと考えがちです。

逆に言えばすでに持っているものを評価して「幸せだなあ」とかみしめる機会は少ないのかもしれません。今あるものに充足を感じることができるなら、私たちはもっと幸せになれる気もするのですけれど。