幸福の「あいまいさ」

私はこうした幸福にまつわる「あいまいさ」が面白くて研究を続けてきました。絶対的であるようでいてまったく相対的で、形がはっきりしない。しかし考えてみれば幸福だけが特別にあいまいなわけでもないと思います。

たとえば「**をすると発がんする確率が高い」とか「**を食べると健康になる」なども、その確率が高まるという意味であって、**をすれば「かならずこうなる」、というのではありません。

確率と言っても、必ずしも7割や8割のような相当に高い確率でなく、たとえ1割とか2割であっても、その関係が「存在しうる」という「確からしさ」に基づいて判断されるケースはあります。特に心理学で扱う説明では、2~3割くらいでも十分に意味があることが多いです。

幸福にまつわる研究データからも、こうすればほぼ間違いなく幸せになれる、というような確率の高さはないかもしれません。しかし一定の関係が存在するという確からしさが示されており、必ずしもあいまいすぎてどうしようもない、ということではありません。

※本稿は、『日本人の幸せ-ウェルビーイングの国際比較』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。

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日本人の幸せ-ウェルビーイングの国際比較』(著:内田由紀子/中央公論新社)

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本書は国際比較を通し、日本社会における幸せの特徴を探る。

また、個人の一時的な感情にとどまらず、地域コミュニティ、職場、学校などの現場における持続的な幸福(ウェルビーイング)についても考える。