頭から離れない!中毒性の高い『イカゲーム』の音楽の制作秘話

――遂に今年(2025年)、『イカゲーム』が完結しましたね。これほど世界中で話題になったこと、ジェイルさんはどのように受け止めていますか?

正直なところ、シーズン1の製作中には全く予想していませんでした。おそらく1世紀に1度あるかないかの出来事だと思いますし、何故ここまで人気を得られたのか考えているのですが、未だ完全には分かっておりません。私自身としては1本の映画と異なり、とにかくたくさんの音楽を作らなければならなかったのが大変でした。

そのなかから今回のコンサートではオーケストラに合う8つの曲を選んでいるのですが、ドラマのために録音したものをそのまま演奏するのではなく、すべて新しくオーケストラに編曲し直しています。

――そのうち3曲は「Moogoonghwaムクゲの花が咲きました」(≒日本における「だるまさんがころんだ」)、「Round and round まるくまるく」、「Komaya コマヤー、コマヤー(大縄跳びの歌)」といった、ゲームのなかで歌われる「わらべうた」です。

これらの曲はドラマのなかでは、途中で他の音楽へと移行することが多かったので、今回はピアノとコンピューターではじまり、途中からオーケストラが加わるような形で演奏したりできたらと考えています。

――そしてシーズン2の第1話で使われた「Way Forward」は、シーズン1の冒頭で聴こえる印象的な太鼓と笛の音楽「Way Back then」を発展させた楽曲ですね。この印象的なメロディはどのように生まれたのでしょうか?

「Way Back then」は『イカゲーム』のオープニングを飾る最も重要な部分ですので、試行錯誤を重ねたんです。まずは様々なことを試しているうち、小学生が遊ぶゲームなのだから、小学校で使われている楽器を使うのが良いのではないかと気付きました。そして敢えて、音程を不安定にしたり、リズムを不規則にしたりする実験を加えたところ、監督も気に入ってくれたんです。

ただ同時に監督から「でもちょっと奇妙すぎるし、キッチュだ。キッチュすぎる」と言われたので、一旦は真面目で厳かな音楽にしようと考えました。しかし『イカゲーム』(シーズン1)の製作がかなり進んでから、やっぱりそれは違うのではないかと思い至ったのです。やっぱり独自性が必要だと考え、いま皆さんが知っている音楽になりました。

チョン・ジェイルさん
(撮影:Tomoko Hidaki)

――続いての「I Remember My Name」は、日本でも人気のエピソードとなったシーズン1の第6話「カンブ」のクライマックスで流れる曲です。

このエピソードは非常に静かで、親しい仲間を殺さなければならないという非常に悲しいお話ですので、どのようにアプローチすべきか熟考しましたね。あまり多くの音符を入れるべきではありませんし、少し息苦しく感じられるような音符が必要だと思いました。心が張り裂けそうだからこそ、耳を塞ぎながら聴いているような音を探しました。ピアノの音ですが、弦は一本だけなんです。ピアノの弦に1000のレイヤーを重ねて、耳を塞いで聴いているような音を作り出しました。音と音のあいだに大きな空間があるようなイメージです。それでいて悲しすぎるだけでもいけないように気をつけました。

――シーズン2ではゲームとゲームのあいだに毎回行われる投票も見どころでしたね。前半の投票場面で流れたのが「Vote」でした。

この場面は叫び声や歓声が飛び交い、まるで次に何が起こるか予測できないゲームのような状況――まさにゲームそのもののような状況――ですので、スペクタクルでありながらも過度に複雑ではない音楽を目指して作曲しました。

――「Pink Soldiers」は、ピンクの衣装をまとった運営スタッフ(シーズン2以降はピンクガードという名前で統一された)を象徴する音楽で、毎話冒頭に映るNetflixのクレジットでも使われていたので、無意識に刷り込まれるように耳にしていた音楽です。

この曲をはじめ、私の音楽スタイルだけでは十分な対比が生まれないと考えた場面では仲間に作曲を依頼しました。血の多い非常に暴力的なシーンを主にお願いしたのが、古くからの友人であるキム・ソンスです。この「Pink Soldiers」ですが、実は彼がおよそ10年前につくった音楽なんですよ。この曲の存在を思い出して、彼に尋ねてみると、まだ何にも使っていないというのです! それで「ねえ、この曲をあててみてもいいかな?」と私が提案し、監督も気に入ってくれたので、長い間忘れられていた音楽を使うことになりました。今回のコンサートで演奏するオーケストラバージョンは、私が編曲しています。

――そしてシーズン3の最終話で流れる「So It Goes」で、『イカゲーム』のセットリストを締めくくられます。

実はファン・ドンヒョク監督の意向としては当初、シーズン2を作らないつもりだったんです。でも結局は製作することになったので、シーズン1のフィナーレを超える本物のグランドフィナーレだと思いながら作曲しました。