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「肌がやたらと乾燥する」「髪の毛のツヤやハリがない、抜けやすい」「ちょっとしたことでイライラする」「疲れが抜けにくい」…。年齢を重ねるとともに、そんな体や心の変化が気になり始める女性は多いのではないでしょうか? 「その変化の背景にホルモンの変化がある」と話すのが、通常の診察では解決できない体の不調に<栄養学的なアプローチ>を用いた治療と生活指導を行ってきた、総合内科専門医・梶尚志先生です。梶先生曰く、特に、大きく影響するのがホルモンの一つ、エストロゲンの減少だそうで――。

“全身を整えるホルモン”エストロゲンとは?

エストロゲン(主にエストラジオールを指します)は、卵巣から分泌される女性ホルモンであり、生理周期の調整や妊娠に関わるという役割はよく知られています。

しかし、実は 骨や血管、皮膚、脳、自律神経、代謝にまで深く影響を与える「全身の調整役」ということまでは知らない方も多いのではないでしょうか? たとえばこんな役割があります。

・骨の健康

骨を壊す「破骨細胞」の活動を抑え、骨をつくる「骨芽細胞」とのバランスを保ち骨密度を維持します。加えて、カルシウムの吸収や骨への沈着を助け、骨の強さを守ります。

・血管・心臓の健康

血管壁の弾力性を保ち、血液の流れを守る働きも持っています。そのため閉経後に増える動脈硬化や心血管疾患のリスクの上昇には、エストロゲン減少が大きく関係しています。

また、血中コレステロールのバランスにも影響し、悪玉コレステロールをさげ、善玉コレステロールを保つ働きがあることも知られています*。

*Protective effects of estrogen on the cardiovascular system. The American Journal of Cardiology Volume 89, Issue 12, Supplement 1, 20 June 2002, Pages 12-17

・肌・髪・粘膜の潤い

皮膚のコラーゲンやエラスチンの生成を促し、潤いやハリを保ちます。これにより、肌の乾燥・たるみ・シワの進行を遅らせる効果が期待されます。

・脳・神経、自律神経の安定

神経にも働きかけ、記憶力・集中力・気分の安定、睡眠の質の維持などに寄与します。