歌は「祈り」に近い
劇中では「愛の讃歌」「バラ色の人生」「水に流して」など16曲を一人で歌うのですが、15年公演を重ねる中で、歌は「祈り」に近いと思うようになりました。「愛の讃歌」はピアフが最愛の恋人、マルセル・セルダンを飛行機事故で亡くした後にレコーディングした曲。愛の讃歌を歌っているときは、客席に歌うというよりも、天に向かって、神に向かって歌っている。そんな感覚なんです。
歌っていると「ここは(音程を)上げて」とか「ここから下げる」とか技術的なことが頭をよぎってしまう瞬間はありますが、本当は感情に音が自然に乗っているだけでありたいと思っています。
劇中では戦争が終わりを迎えて歌う「ミロール」という曲もあります。もちろんいつでもその時代背景を考えて演じていますが、2022年の公演では、ウクライナ戦争でロシアが侵攻している映像を見て、戦争をよりリアルに感じるようになりました。
「もしウクライナの人たちが『ミロール』を歌ったらどうなるか想像して歌おう」と梅ちゃんと歌稽古で話したこともありました。こうやって世界は壊されていくんだっていうのを目の当たりにして、年を重ねるごとに歌うこと、演じることの重みを感じますね。
