肥満と健康障害

体脂肪が過剰に蓄積すると肥満になります。健康診断などでも、肥満になってはダメだといわれますが、なぜ肥満は健康に良くないのでしょうか?

体脂肪量が増えるとは、脂肪細胞に蓄積される中性脂肪の量が増え、脂肪細胞が肥大した状態を指します。脂肪細胞はこうなると、血液中にアディポカインという悪玉ホルモンを放出します。このアディポカイン=Adipokineは、脂肪細胞Adipocyteが分泌する生理活性物質Cytokineという意味で、1990年代半ば以降、多くの種類が報告されてきました。

『筋肉はすごい-健康長寿を支えるマイオカイン』(著:青井渉/中央公論新社)

ほとんどのアディポカインは、慢性炎症を引き起こす悪玉の物質で、筋肉や肝臓の代謝能や血管の柔軟性を害します。筋肉の代謝能を悪くするなど、血液中の糖や脂肪を消費する能力を落とします。そうするとさらに肥満になり、つまりは悪循環に至ってしまうのです。肥満の問題は、まさにこの点、アディポカインが全身に及ぼす悪影響にあるのです。その結果、心臓の病気や、糖尿病、肝臓障害など様々な生活習慣病のリスクを高めます

このような病気になる前段階、つまり肥満による健康障害が出始めた段階を「メタボリック症候群(内臓脂肪症候群)」といいます。メタボリック症候群とは、内臓脂肪が蓄積し、血圧、血糖、血中脂質が基準値を超えた状態です。腹筋の下の内臓周囲に貯まる内臓脂肪は、皮膚のすぐ下に貯まる皮下脂肪よりもアディポカインを分泌しやすいことがわかっています。

今や成人男性の約30%がメタボリック症候群が強く疑われる者に該当します(2019年国民健康・栄養調査)。一方、女性は女性ホルモンの影響で皮下脂肪が貯まりやすいのですが、男性ほど内臓脂肪が蓄積しません。メタボリック症候群が強く疑われる者は、成人女性のうち約10%です。

メタボリック症候群の状態が悪化して糖尿病や動脈硬化など病気になってしまうと、もとの健康な状態に治すのは難しくなります。例えば糖尿病になると、服薬によって血糖値を管理して重症化を防ぎながら、病気と付き合っていくことになります。そのため、健康診断でメタボリック症候群の診断が出たら、早い段階で適切な食事と運動に取り組むことが病気の予防につながるのです。