角田 言葉もかなり違うんですね。

楊 はい。昔、私のアルバイト先には客家人が何人かいたのですが、その人たちは聞かれたくない話をする時に客家語を使っていました(笑)。ただ、アミ族やシラヤ族など台湾原住民が置かれた立場は微妙です。私と同世代の原住民の人たちは、ほぼ民族の言葉を話せません。

角田 自分がそこに属していない場合、今のお話だとたとえば原住民の方々の目線で書く、というのは私にはとてもハードルが高く思えます。でも、この時代において、自分はその立場にはなくても、問題視していることは勇気をもって書かなくてはいけないのかな、とも考えているんです。

楊さんは自分とは違う属性の人物を書く場合、注意していることはありますか?

 現実問題として、台湾ではエスニックグループによって社会的な立場の強弱があるのは確かです。やはり原住民に比べて漢人は数も多いし、社会的に声が大きい。ですから、漢人の私が原住民の人に代わって何かを書くということは、あまりしたくないと思っています。

ちなみに私は漢人の中の「本省人(45年以前から台湾に住んでいた人々)」ですが、戦後に中国大陸から来た「外省人」の統治者たちのほうが声は大きかった。だから本省人の私が外省人のことを書くことはできる、と考えています。でも、なかなか微妙なテーマではあると思います。

 

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