「あの頃は、毎日めまぐるしく変わっていく現実を受け入れるのに精一杯。上手にできない自分を自覚しているのに、走り続けるしかなかったですね」(撮影:木村直軌)
1975〜76年に放送され人気を博した青春ドラマ『俺たちの旅』で主役を務めた中村雅俊さんが、映画『五十年目の俺たちの旅』で初めて監督に挑戦。さらに歌手活動も精力的に続けている。74歳の現在も自然体でいる秘訣は。(構成:平林理恵 撮影:木村直軌)

前編よりつづく

松田優作さんに言われたこと

俳優デビューしたのは、大学4年のとき。文学座附属演劇研究所に入所してすぐ、テレビドラマ『われら青春!』の主演、先生役が決まりました。

学生気分が抜けないまま売れてしまい、文学座で1年先輩の松田優作さんに「お前は本当に気楽にやってるなあ」と言われたんです。優作さんは、プロとしての自覚があって、それに比べて自分は幼稚だった。

あの頃は、毎日めまぐるしく変わっていく現実を受け入れるのに精一杯。上手にできない自分を自覚しているのに、走り続けるしかなかったですね。自分はラッキーなだけで、恵まれすぎていることへの引け目みたいなものもありました。

人気者にはなれたけれども、大人は俺の演技を認めないだろうと思っていたから、慢心はなかったんです。『俺たちの旅』でも、秋野さんには、長いキャリアで培われた実力があり、俺はそこに至っていないのがよくわかっていました。まあ、だからこそ頑張れたのかもしれませんが。