『推し』を語って、攻撃にあった運転手さん

しかし、推しには、気をつけなくてはならないこともある。

かなり前だが、あるタクシー会社が助手席の後ろにパネルを付け、運転手さんの出身地と趣味などを掲示していた。その理由を聞いたら、お客様に親しみをもってもらい、楽しい会話もするためだという。その運転手さんは趣味を『ドライブ』としていた。

私は、「ドライブが趣味とは、趣味と職業が一致していいですね」と言うと、運転手さんは「お客様は野球を観戦するのは好きですか?」と聞いてきた。私は、「野球のことはよく知らないのです」と答えた。

すると運転手さんは、「僕は巨人軍の大ファンなのですよ。趣味を『野球観戦』としていたら、ある夜、お客様に『どこのファンなの?』と聞かれ、『巨人軍』と言ったら、『どの選手のファンなの?』『巨人軍のどこが好きなの?』とか次々に聞かれ、お客様もファンだと思い、嬉しくてあれこれ話したら、その後、猛烈な攻撃のお言葉を浴びました。お客様はアンチ巨人軍だったのです。それ以来、差しさわりのない趣味として『ドライブ』と掲示しているのです」と話していた。

(写真:stock.adobe.com)

私も勤めていた会社の先輩から『アンチ貴ノ花攻撃』を受けたことがあるので、その不愉快さはよく理解できた。その先輩は武蔵丸が横綱になると私物化して、「俺の武蔵丸」と言っていたのには笑えたが…。

しばらくして、その会社のタクシーに乗ったら、運転手さんを紹介する掲示を止めていた。ほかの人の『推し』に対しては、寛大でありたいものだ。

 

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