高校時代の渡辺さん(左)(写真提供:エムアンドエムスタジオ)

そして僕たちのところに来て、リグレーのチューインガムやハーシーズのチョコレートをくれるわけです。すると今度は、銀紙や、ピカピカの包装紙とデザインに圧倒される。それまでザラ紙しか見たことなかったので、大切にとっておきました。

45年9月、進駐軍のラジオ放送WVTR(後のFEN)が始まり、アメリカのポップスやハワイアン、ジャズやヒルビリーなど明るい音楽に夢中になりました。それもアメリカによる、一種の文化政策だったんでしょうね。

間もなく、ビング・クロスビー主演で『ブルースの誕生』という映画が公開されました。少年時代の主人公が、ニューオーリンズでデキシーランドジャズを演奏している黒人に交じって、カッコいいクラリネットを吹いている。それを見て、すっかりその少年に憧れてね。宇都宮の映画館の支配人が、僕をこっそりタダで入れてくれたので、1週間、毎日その映画を観ました。

その頃、宇都宮の小さな楽器店のショーウィンドウに中古のクラリネットがポツンと飾ってあって、値段をみると3000円。ハンストをして親父に「買ってくれ~、買ってくれ~」とねだって、買ってもらいました。15歳だったかな。

でも、指の使い方も吹き方もまったくわからない。すると親父が、「近所の駄菓子屋のおじさんが、昔、無声映画に合わせてクラリネットを吹いていたよ。行ってごらん」と教えてくれた。そこでおじさんのところに行って、1回10円で3日間、教わりました。