それに自分が出ない舞台でも、お客様が楽しんでくださるものを作ることも大事なのです。新作歌舞伎の『火の鳥』などの新しい作品を作るにも体力がいりますから、この先いずれ、それもできなくなるかもしれません。今のうちにやっておかないと、という思いはあります。

若さを失っていくことに焦りを感じ、老いに抗おうとしたときもありました。でもある時期から、そうしたこだわりがはらりと剥がれて、自分から離れていった感じがします。今の自分にできることをすればいい――。そういう心境になったのです。

長く生きていると、別れも増えてきますね。同時代の俳優として舞台をともにしてきた十八代目中村勘三郎さんは2012年に、十二代目市川團十郎さんは13年に亡くなりました。

そして、私が19歳のとき出会って、翌年初めて写真を撮っていただいて以来、長いおつきあいだった写真家の篠山紀信さんも、24年に鬼籍に入られた。

本当に寂しいですけれど、別れを経験するのも人生です。受け止めなければいけないと思うようになりました。