若い人に教えるのも難しいですよね。伝統芸能に限らず、世の中の流れとして、昔のような厳しい教え方は通らなくなりました。とはいえ、耳に心地よいやさしさだけでは通用しないですし、どこかが違うように思うのです。

私はすべてをまったく気にしないで、はっきり言います。いじわるで言っているわけではないのですから。良くないものは良くないと誰かがはっきり伝えなければ、本人が気づくことはできません。

振り返ってみると、私は本当に先輩に恵まれていました。はたから見たら厳しい指導と思えるようなこともあったでしょう。でも、好意を持って言ってくれる人たちばかりでしたので、厳しいと感じたことはなかったんです。

厳しい助言であっても、「あ、このことを言っていたんだ」と理解できると、あえて本当のことを伝えようとしてくれたのだと気づき、あとから感謝の念が湧いたものでした。

なかでも心に刻まれているのが、養父・守田勘彌(もりたかんや)の「褒め言葉を聞いてはいけない」「決して驕ってはいけない」という教えです。10代の頃から徹底してそう教えられたことが、今の自分にも聞こえているのです。

後編につづく

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