山への憧れがむくむくと蘇ってきた

仔犬大吉はそれはもう凄まじく可愛く、富士丸との別れ以来触れなくなっていた一眼レフを引っ張り出し、毎日200枚くらい写真を撮るようになった。

食べる、遊ぶ、寝る、ウンチするだけのサイクルの仔犬の行動に「あぁ、犬ってこうだった」という感覚が戻ってきた。

そこで初めて、この2年半見ていた景色がモノクロームの世界だったと気がついた。大吉を迎えたことにより、みるみると色彩が増え、気力が湧いてきた。一緒にたくさん遊びに行くようになったし、不思議なことに仕事への意欲も復活してきた。そして、同居していた女性と籍を入れた。

犬と暮らす中でどんどん以前の自分に戻っていくのを実感した。大吉が2歳になる頃、もう一頭を迎えることになる。それが福助で2014年5月だった。多頭飼いは初めての経験だったが、世話する手間が2倍になるのかと思いきやたいしたことはなく、大吉と福助がいることで楽しさが2倍以上になった。

それまで山への夢は無意識に封印していたのか、思い出すことはなかった。けれど、大吉と福助と旅行するようになり、自然が多いところで彼らが弾けるように喜ぶ姿を見て、私の中で山への憧れがむくむくと蘇ってきた。

山の家を手に入れて、大吉と福助と過ごしたい。そんな明確な目標ができた。

※本稿は、『犬のために山へ移住する: 200万円の小屋からはじまる、不便でも幸せな暮らし』(草思社)の一部を再編集したものです。

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犬のために山へ移住する: 200万円の小屋からはじまる、不便でも幸せな暮らし』(著:穴澤賢/草思社)

物件探しから引っ越し、リフォームやDIY、かかる費用、田舎の人付き合い、老後の問題など、地方移住のリアルと、メリット・デメリットを犬たちとの山の暮らしの日常を通じてユーモラスに綴ったエッセイ。

愛犬とのしあわせな暮らしを実現したいと願うすべての人必読の一冊。