人生の真ん中のかけがえのない時間

相手をよく知らないまま、まさに魔法にかかったように結婚した感は否めませんが、結婚ってそういう面もあるのではないでしょうか。お互いよーくわかり合ってしまうと、意外と誰も結婚できなくなります。

おじさんは結婚当時58歳で、63歳の時に初めてパパになりました。パパになったと思ったら、以前大腿部に入れた人工関節を脱臼するという不運に見舞われ、何度も手術を繰り返して、2本の杖なしでは歩けなくなってしまったけれど、11年7ヵ月、パパをして亡くなりました。この漫談みたいな出会いがあったから、人生の終盤を楽しんでくれたかな? 私は人生の真ん中で、かけがえのない時間を過ごすことができて、幸せをいっぱい充電できました。

夫との出会いは、自分の中で大事にしておきたい思い出だったけど、なにせおもしろいので、一人で胸の内にしまっておくのはもったいない気がして、公開しました。こんな魔法をかけられる人、ただのナンパ師じゃない。『婦人公論』読者はもちろん女性ばかりでしょうけれど、男性にも読んでもらって、うちの夫を参考に男の魅力を発揮してほしいです。

今や女性は何でも自分でできるようになって、特に男性の必要を感じなくなっているかもしれないけれど、人は一人でいるより二人でいるほうが笑いも喜びも2倍になる。寒さは一人より、二人で凌ぐほうが絶対いい。

日本人って、ちゃんと頑張っていればお天道様が見ていてくれて、いい方向に導いてくれる、いい縁も勝手につながっていくと、なんとなく思っているところがないでしょうか。知らぬ間に受動的になり、出会いがないことを縁がないせいにしてしまいがちです。

イタリアって、人が人とつながる社会だと思っているのですが、それはなんとなくではなく、積極的につながっているのです。まあ、イタリア人はもともとおしゃべり好きで外交的な気質がベースだから、一般的に内向的な日本人には難題かもしれないけれど、縁がないことを嘆くのではなく、縁を自分からつかみに行ってほしいと思います。そうしたら、もっと幸せになれるのですから。

≪電話口の筆者≫

シチリア島でご縁をつかんだ本郷さんは、現在12歳の息子さんと二人暮らし。料理上手な夫の手ほどきを受けたシチリア家庭料理の教室を、日本からの観光客向けに開いているのだとか。

近況をうかがったのがちょうど、コロナウイルス感染拡大防止で厳しい外出制限がかかっている時期でしたが「息子の学校が休校後10日でスタートさせたオンライン授業の様子に耳を傾けたり、封鎖解除後の生活をおもしろおかしく想像したりしています」と、前向きに過ごしておられる様子でした。

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