不安なときはなににすがる?

岩井 ぼくは最近、家でたこ焼きばかり作ってます。ちゃぶ台に卓上型のたこ焼き器を置いて、テレビを見ながらくるくる。

清水 それは、きっと家で楽しいことがしたいんだね。私たちのパンと同じだ。

岩井 たこ焼きがすごいのは、たこがなくてもうまいところ。さきいかを入れたってうまいんですよ。それにぼくの場合、具材がなくても平気。

清水 生地だけ? なんかおもちゃみたいな食べ物だね。

岩井 粉と卵と水で種を作りますよね。種が少し減ってきたなあ、と思ったら水を足す。これで無限に焼き続けられるのも魅力です。

清水 岩井さんは、ヨーグルトと同じで、白くて増殖していくものが好きなんだね。

羽田 まあ、粉さえ手元にあれば作れると思うと、安心感のある食べ物なのかもしれませんね。

清水 こういうときは、よけいにね。今回、トイレットペーパーがずいぶん店頭からなくなったって言うじゃない? ヒトは緊急事態のとき、無意識に白くてふわふわしたものに惹かれるって聞くよ。

岩井 まさか清水さんのパンも?

清水 あなたのたこ焼きと同じかもしれません。

岩井 すごい共通項。(笑)

羽田 ただ、岩井さんのたこ焼きはどうにも不健康そうですよね。だって野菜もないし、たこもなかったら、ただの粉でしょ。(笑)

岩井 いや、粉が素なのはパンも一緒ですからね。パン作ってる人たちから、とやかく言われるなんて!

羽田 確かにしょせん粉だから、パンも粉にはこだわりたいです。

清水 わかる。「春よ恋」っていう高級な小麦粉を使ったら、すごくおいしくできて驚いた。

羽田 ぼくは全粒粉のパンを作りたくて。でも全粒粉は高くて、1キロ1000円くらいするんです。普通の小麦粉が1キロ130円で買えるのに、加工前のひと手間かけていない全粒粉のほうが10倍の価格って、腑に落ちないですよね。

岩井 湯豆腐みたいなものじゃないですか(笑)。あれ、豆腐をお湯に入れてびしゃびしゃにしただけなのに、信じられない値段とるでしょう。

清水 びしゃびしゃって言うな!

〈後編につづく


清水ミチコさんの好評連載「三人寄れば無礼講」書籍化!

2人×18回、“今、会いたい人”を招いて繰り広げられる、ざっくばらんで愉快な鼎談。

・第1回:南伸坊 / YOU
・第2回:三谷幸喜 / 大竹しのぶ
・第3回:林のり子 / 吉本ばなな
・第4回:養老孟司 / 甲野善紀
・第5回:野沢直子 / 藤井隆
・第6回:蛭子能収 / 五月女ケイ子
・第7回:井上陽水 / 山下洋輔

など