仕事で浮かんでくる公式

ときどき気が向けば仕事をする。その時には、

X×Y=C

この公式が浮かんでくる。若い頃に思案したことだ。Xはアイデアである。作品を創るアイデア、そのよしあしだ。Yはそれを書く能力だ。広い意味での筆力だ。アイデアと筆力が交って作品ができあがる。

(写真提供:Photo AC)

作家としてデビューした頃はXはそれなりに大きい。新鮮なアイデアが浮かぶ。しかし筆力Yはまだ小さい。下手くそだ。年齢の増加とともに(私の場合は)Xは乏しくなるがYは増す。この関係でCは……作品の出来ばえはコンスタント、つまり一定のCを保つが、これはあらまほしい状態であり、間もなく崩れる。Xは新鮮さを欠き、Yはマンネリ、いや、衰える。Cはどんどん小さくなる。クリエーターの宿命ではあるまいか。

当然のことながら私の場合はこの公式が破綻している。

――なんとか食い止めることはできないか――

できない。絶対にできない。だから諦める。

そしてすばらしいことに90歳ともなると諦めることになんの屈託もない。達観の極みである。「へえ、Xってなんですか。Yが筆力かな?」と呟く。ときに呟ききれず、ここに書いたりするのがいじましい。なさけない。お許しあれ。