下調べは旅のお守り
一方、宿泊先選びではちょっと苦い思い出があります。
あれはまだひとり旅を始めたばかりの頃でした。とある街で取材仕事があったのですが、その街から有名な温泉地までは目と鼻の先。これは行くしかあるまいと張り切ったものの、温泉地で“おひとりさま”を受け入れてくれる宿は限られます。今でこそ少しは増えましたが20年ほど前は皆無といってもよいような状態でした。この時も、2軒ほどしか候補がなく、しかも一方は温泉宿ではない普通のビジネスホテルだったので選ぶ余地がない。
当時から私は宿を選ぶ際には必ず口コミを読むようにしていました。特に清潔度と騒音に関する項目はかなり細かくチェックします。そのふたつが私にとっては妥協できないポイントだからです。
そのホテルの口コミ評価は全体的にはそれほど悪くなかったものの、騒音についてのコメントがいくつかありました。ほとんどは部屋の冷蔵庫のモーター音に対する不満でした。私は若干聴覚過敏のケがあるので一瞬不安は感じたものの、どうしても温泉に入りたい欲が勝ってしまい、ちょっとぐらいならどうにかなるだろうと悪い情報には目をつぶり、えいや! で予約したのですが……モーター音、私の予測をはるかに上回る実力の持ち主でした。
起きている間はそれほど気にならなかったものの、いざ寝ようとするとモーターからの振動が畳を伝わり布団から枕に上がってきて、まるでデスメタルバンドのコンサートのような重低音が頭に直接響いてきます。今なら、コンセントを抜いてしまえ! で片付けますが、当時はなぜかそれに思い至らず、望まぬオールナイトライブを味わう羽目になってしまったのです。翌日の体調がボロボロだったのは言うまでもありません。以来、騒音に関する口コミにはますます敏感になりました。
海外旅行ではさらに宿の立地に対する口コミのチェックも必須です。相場より安いと思ったら治安が芳しくない場所だった、なんてこともざらにあります。残念ながら、女性は男性よりも危険な目に遭う確率が高いものです。宿泊場所はより慎重に選ばざるを得ません。
私がこれまで何度もひとり旅を繰り返しながら特に大きなアクシデントに遭わずにすんでいるのは、運もあるでしょうが、やはり下調べの習慣が大きく寄与しているのでしょう。
なにかことが起こったとして、焦ってパニックを起こすか、落ち着いて対応できるかで、旅の成功不成功は決まるといっても過言ではありません。下調べなんて面倒、と思うかもしれませんが、そこは旅を楽しくするための保険と思って少しがんばってみるのもよいのではないでしょうか。
※本稿は、『気ままに楽しく! 大人の女ひとり旅』(清流出版)の一部を再編集したものです。
『気ままに楽しく! 大人の女ひとり旅』(著:門賀美央子/清流出版)
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