(写真提供:Photo AC)
2025年は各地でクマによる深刻な被害が相次ぎました。そんななか、20年以上にわたってツキノワグマの生態を研究してきた東京農工大学大学院農学研究院教授の小池伸介先生は、「クマは付き合い方を間違えると、命を奪われる存在である」としつつも、「正しく理解し、適切に対処すれば、共存は可能」と語ります。そこで今回は、小池先生の著書『クマは都心に現れるのか?』から抜粋し、クマに関する最新情報をお伝えします。

クマはかなり長距離を移動することができる

低くなった人間への警戒心、持ち前の好奇心や探索能力、そしてドングリの凶作に伴う食べ物不足による大量出没。これらが重なり合い、本来の生息域から移動してくれば、これまで想定していなかった場所へクマが出現する。

では、クマはどれくらい移動することができるのだろうか。一般的に、クマは潜在的にかなり長距離を移動することができる動物だとされている。

これまでの私たちの研究では、オスであれば夏や秋に数日で数十km移動することも珍しくない。親離れした直後の若いオスも、母親の行動圏から数十km離れたところまで移動し、そこで新たな生活圏を築くこともある。

メスでも、ドングリの凶作の年の秋には、その年に生まれた子供を連れて数十kmも移動したこともある。クマにとって数十kmの移動は日常の範囲であろう。