高齢になると、迫りくる死を意識することも多くなります。しかし、長年高齢者医療の現場に携わってきた精神科医・和田秀樹先生は、「死を怖がるより、今を生きることに専心すれば、あなたのこれからの人生は確実に充実します」と語ります。そこで今回は、和田先生の著書『死ぬのも楽しみ 「いい人生だった」と最期に思うために必要なこと』から一部を抜粋し、高齢期を幸せに過ごすためのヒントをご紹介します。
高齢になると、眠るように死んでいく
私は長く高齢者の医療に携わってきましたから、たくさんの死と向き合いました。もちろん患者さんはさまざまな病も抱えていますから死に方もさまざまです。
ただひとつだけ言えるのは、ほとんどの人が眠るように、というか眠ったまま起きてこないという形で死んでいくということです。高齢の人ほどそういう最期を迎えます。
苦しんだり、死に抗うように力を振り絞って最後に息を引き取ったりするような死に方はめったになくて、眠っている状態でそのまま心臓が止まり、脈が途切れます。
「もう長くはないですね」とか「今晩あたりかもしれません」といったことは家族の方にも話しておくので、みなさんが枕元に集まったり交替で見守ったりするのですが、その場合でも「眠っているんだな」と思っているといつの間にか息を引き取っていたりします。
眠るように死んでいくというのは、これといった別れの言葉が交わされることもないということです。
「長い間、世話になったね」とか「いろいろありがとう」という別れの言葉はないし、「ゆっくり休んでください」という見送りの言葉も交わされません。感動的な死というのはほとんどないのです。