原作者・吉田修一さんとの出会い

<修業を重ね2015年、五代目中村翫雀改め四代目鴈治郎を襲名する。この年、鴈治郎さんは『国宝』の原作者の吉田修一さんと出会う。鴈治郎さん行きつけのバーの女性店主が、吉田さんの担当編集者から「歌舞伎界を書きたいとう作家がいる」と言われ、鴈治郎さんを吉田さんに引き合わせたという>

吉田修一という人は歌舞伎を書けるの?と思いました。『悪人』『怒り』などそれまでの彼の小説には歌舞伎というイメージは全然なかったから。そこで、コロナ禍の前で楽屋に誰が来てもいい時代だったので、楽屋に来てもいいよと言ったら、本当に来ました。いつもデニムで来て、私が楽屋で顔をする(化粧をすること)のを見たり、出番になると舞台裏までついて来たりする。大道具さんに「邪魔だ」と怒られる。だから、弟子が着る黒衣(くろご)を着ていれば、誰にも文句言われないだろうと考え、発注して作ってもらいました。3年間ぐらい、通ってきたでしょうか。地方公演にもよく来ました。小説が朝日新聞で連載中は「こういう展開にするんだ」と思って読んでいました。

「連載を〈こういう展開にするんだ〉と思って読んでいました」

小説は、歌舞伎の世界を舞台にして人の生き様ざまを描いています。映画『国宝』は、小説ありきです。言い方を変えれば、『国宝』は歌舞伎を見せる映画ではなく、ヒューマンドラマ。『曽根崎心中』という歌舞伎を見せる映画が、シネマ歌舞伎なのです。

お初が徳兵衛の手を取って先を行く。歌舞伎では珍しいシーン〈シネマ歌舞伎『曽根崎心中』2026年4月10日(金)全国公開(C)松竹株式会社〉