最初は言下に室長の打診を断った

上昇志向はほとんどないとはいえ、問題意識は持っていた。かつてのNHKでは、異動の面でもジェンダーギャップがあった。

男性は室蘭から鹿児島への異動があったりするものの、女性にはほとんど異動がなかった。いまのままではこの組織は長く続かない。そう感じていた山根さんは、毎年、人事に提出する書類には、異動についての提言を書いていたという。いずれは女性がアナウンス室長になるべきだとも考えていた。しかし、それは自分ではなく、誰かがやってくれればよい。そんな感覚でいたところに、室長の打診があった。

山根基世
山根基世さん(写真提供:潮出版社)

「最初は言下にお断りしましたよ。私は組織運営に携わったことがないし、現場しか知らないと。すると理事がね、こんなふうに言うんです。『君ね、いままでアナウンサーとして楽しくやってきたんだろう。最後に恩返ししてくれよ』って。もっともらしい口説き文句ですよね。ただ、私は先輩のやり方を見て学んだりはしましたけど、手取り足取り教えてもらったことは一度もありません。アナウンサーとしては自分で勝手に育ったつもりでいました。組織の世話になった気なんてないわけです。むしろ、私のほうこそ恩返しをしてもらいたいくらいでした(笑)。

でも、同時に女性の異動のことや、アナウンサーの処遇改善なんかの問題意識は持っていましたから、室長になればそれを改革できるかもしれないと思ったんです。そうして、最終的にお引き受けすることになりました。目の前にある課題を解決する。そのために私は室長になったんだと、運命のようなものを感じましたね」