昭和の名曲を伝えたい
ライブで、さまざまな土地の、いろいろな年代のお客さまにトークを交えて歌を聴いていただく。それと同様に、自分とは異なることをやっている人たちとしゃべったり、関わったりすることでたくさんの刺激を受けられるんだな、と思うようになって、少し意識が変わってきました。軽やかになった感じ、とでもいうのでしょうか。
そんな気持ちをフレッシュな状態で反映させたのが、先日リリースしたアルバム『Blooming Hearts』です。このタイトルには「心に彩りを」という意味がありますが、僕自身の心にも徐々に花が咲き始めた、という思いも込められています。
オリジナル4曲のうち、3曲は僕が作詞をしています。以前は、詞に直接的な表現をあまり選ばず、抽象的にしてみたり、人のエピソードを自分なりに解釈する、というアプローチが多かったのですが、今回のアルバムの作品に関しては、自分が言いたいことや伝えたいことをしっかりと表現しました。
そしてアルバムには、母・山口百恵のカバー曲も4曲。2年前に、初めて母の曲のカバーアルバム『I'm HOME』を出すことになったとき、母は「自分の歌を自分の息子の声で聴けるのは嬉しい」と言ってくれました。その言葉が励みとなり、また、だからこそ母の歌を愛してくれた方々にも失礼のないように歌おう、と自分に言い聞かせもしたのでした。
初のカバーアルバムを出したのち、いろいろな場面で母の楽曲を披露する機会が増え、聴いているお客さまの熱量をリアルに感じました。それが今回の4曲のアルバム収録にもつながっています。
いずれも40年以上も前の作品ですが、今聴いても心に響きます。歌詞の日本語も美しい。「昭和にはこういう名曲があったんだよ」ということを、母を知らない世代にも伝えたいし、令和の時代にも届けたい──そんな思いで歌っています。