個人で東京大空襲の慰霊碑と塔を建てる

ずっと長い間、東京大空襲の慰霊碑も記念館もないことを残念に思っていた。3月10日だけで10万人以上の民間人が犠牲になったのだ。

40年以上も前から、厚生省(当時)や東京都に要望や陳情を出していたが、まったくどこも動かない。なぜなのかはわからない。

国も都も、結局なにもしない。

「とうとう、だったら自分で建てなきゃダメだと心を決めました。それには下町を見下ろせる上野の山が一番だと思い、公図を見たんです」

半分が東京都、もう半分が寛永寺の敷地である。その山の真ん中に16坪の空き地があった。これくらいの土地ならわたしでも買えるかもしれないと頼みに行った。

「『ここに東京大空襲で犠牲になったひとたちの供養塔を建てたいのです、お願いします』といったら笑われました。海老名さん、もう少し勉強しなきゃダメですよって。そこは天海僧正(寛永寺創建者)の毛髪塔だったんです。

それでも都に出した請願書のコピーを置いて帰りました。

そうしたら3日後でしたか、寛永寺の浦井正明先生からお電話をいただいたんです。『無償で土地を提供します。あなたの悲願の塔を建ててください』と。こんな幸せなことがあるだろうかと思いました」

驚いたことに、それから1週間も経たないうちに東京都からも連絡があった。記念碑建造の許可が下りたのである。

「嬉しくて頭がおかしくなりそうでした。でもそんな大きなものを二つも建てるお金なんて、わたしは持ってない。子どもたちに、『どんなことがあっても建てたい。土地を売ることになるかもしれない』と相談しましたら、大賛成してくれました」