このままでは、絶対に後悔する
その後、母は無事に退院し、口は元通りになっている。
だが、お盆や正月に見る母の背中は会うたびに小さく、頼りなくなっているし、薬の袋をたくさん見かける。
介護、あるいは死。そんな現実的なタイムリミットが、確実に少しずつ迫っている。愛せない自分を責めることで、かろうじて保ってきた私の中に、激しい焦りが生まれている。
早く許したい。
母の命の灯火が消えてしまう前に。普通の親子のように。
何の教義も、何の悔恨も介在させず。ただの娘として、真っ直ぐな「ありがとう」を伝えてみたい。
わかってる。わかってるんだよ。このままでは、絶対に後悔する。
スマホが震え、LINEの通知が届く。
「品薄らしくて、無理だったらいいんだけど。ドラゴンズの90周年限定のマグカップがいいかな」
やれやれ、またドラゴンズか……。
よし、わかった。なんとしても絶対に手にいれて、今年は直接渡しに行ってみようかな。
