第三の黄金期

日本映画の堅調ぶりは何も興行的な側面だけではない。宮崎駿(「崎」は正しくは「たつさき」)や細田守らのアニメーションはもちろんのこと、21世紀以降も、日本映画の作品や日本人がハリウッドや国際映画祭の場で毎年のように受賞を果たしている。

もっとも代表的な存在は、『万引き家族』(2018年)でカンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞した是枝裕和と、『ドライブ・マイ・カー』(2021年)や『偶然と想像』(2021年)、『悪は存在しない』(2023年)がアカデミー賞や三大国際映画祭で連続受賞を果たした濱口竜介だろう。

それ以外にも、山中瑶子や三宅唱、坂元裕二らの監督や脚本家、役所広司や真田広之、浅野忠信らの俳優が続々と栄誉を受け、世界的な脚光を浴びている。

もちろん、近年も映画監督の深田晃司が積極的に提起しているように(『日本映画の「働き方改革」』)、一方でこれまでの日本映画界の現場が、やりがい搾取の過重労働やハラスメントの横行を黙認したり、市場が東宝を筆頭とした一部の大手映画会社の事実上の寡占体制で成立していたりといった構造的な問題を抱えてきたことは事実である。しかし、2022年には深田や是枝、諏訪敦彦、西川美和ら6人の監督が、映画製作をめぐる労働環境保全やハラスメント防止などを求める非営利団体を立ち上げるなど、映画業界改善に向けた動きも活発化している。

現代日本の映画批評に絶大な影響力を誇った蓮實重彦(「蓮」「彦」は正しくは旧字体)がこの数年来、強調している表現を使うならば、日本映画は確かにいままさに、「第三の黄金期」(『見るレッスン』)を謳歌していると言っていいのかもしれない。

※本稿は、『『君の名は。』は日本映画に何をもたらしたのか 庵野秀明・岩井俊二・新海誠から読み解く現代日本映画史』(星海社)の一部を再編集したものです。

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『君の名は。』は日本映画に何をもたらしたのか 庵野秀明・岩井俊二・新海誠から読み解く現代日本映画史』(著:渡邉大輔/星海社)

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