病気になるということは

『がんと生ききる 悲観にも楽観にも傾かず』というタイトルは、迷った結果、決めたものです。編集者のアドバイスもあり、「がん」という言葉を入れることに。読者からの反響はとても大きいです。

再確認したのは、講演会でも読者からの手紙でも、自分もがんだったけれど誰にも言えなかったという声が多かったこと。「一緒にいるよ」と手を差し出されたい時なのに、少なからぬ人が孤立を味わっていたんですね。

人間にとって病気になるというのは、「弱くなる」と言い換えることも可能です。男性の場合、「弱くなる」ことを公表すると、競争社会から弾かれるのではないかという恐れもあるのかもしれません。女性は、言ってしまうと「みんなと違う」ことが露呈する。人はみな、違って当然なのに。そんな社会の構造が本当に嫌になります。

ただ、嘆いてばかりいても仕方ない。私は今、81歳ですが、まだまだやりたいことがあるので、前に向かって進まないと。

数年前から、有機農法のヴィレッジを作りたいと計画を立てています。そこを、この社会で「違い」で苦しめられる人たちの、就労と安らぎの場にしたいのです。病気になったことで、ヴィレッジに簡易宿泊所を作るという夢がひとつ加わりました。

たとえば「あなたはがんです」と言われた後、人と繋がりたいと思う時もあるだろうし、一人になりたい時も当然あるはず。自分の気持ちに合わせて、宿泊所で自炊してもいいし、誰かが作ってくれたものを食べてもいい。そういう場を作りたいのですが、まずはいつまで元気でいられるか。

この本を読んだ方から「新しい哲学書ですね」と言われたのが、うれしかった。人間、誰でも最後に辿り着く先は「死」です。でも、そこまでをいかに生ききるか。この本は、自分への、そんな問いかけでもあるのです。

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