自慢のオーガニック素材を使ったレストランにて。ランチタイムには行列ができるほどの人気(撮影=大河内 禎)
作家の落合恵子さんは、2022年11月、多くの人に愛されてきた児童書専門店の移転を決断。いまの心境と、これからの挑戦について聞いた(構成=篠藤ゆり 撮影=大河内 禎)

<前編よりつづく

手放したら次へ進む

特集のテーマは「やめてスッキリ、幸せになる」でしたね。私は何を手放し、何を手にしてきたか……。この大仕事だった店舗の移転については、自分としてはけっこう長い間ぐずぐず考えたつもりでしたが、友人からは「何でも一晩で決めちゃう無謀の人」と呆れられてきました。

いったん決めたら、それまで抱えていたものをスパッと手放し、《後先考えずに》動いてしまう。それは若い頃からの、私の体質なのかもしれません。アナウンサーとして入社した文化放送を辞めたときもそうでした。

当時はまだ女性のアナウンサーが少なく、たまたま受け入れられる場合が多かった。私は、そんな自分に違和感を抱いていました。たとえば人気ラーメン店で並んでいると、お店の人から「先に入っていいよ、忙しいんだろ」と言われたり。

そういう状況そのものが恥ずかしくてたまらなかった。それをちょっと楽しめる余裕のようなものも、私にはなくて。《若い女》だから特別扱いされる。そういった屈辱の気持ちと、海の向こうからやってきたフェミニズムの波が重なったのかもしれません。