今振り返れば、出場してよかったと心から思うのですが、コンクールへの参加は前々から決めていたわけではありません。突然降ってわいた――というと日本語として失礼なニュアンスになってしまいますが、本当にいろいろな偶然や幸運が重なって実現したことなのです。
2024年の12月にショパンコンクールの運営団体から、驚きの連絡がありました。「出場基準を変更し、指定のコンクールで2位以上を獲得した人は予備予選を免除することになったので、あなたには出場権があります」と。
ピアニストにとって憧れのコンクールに挑戦できると知って驚きつつも、すぐに出場を決めることはできませんでした。というのも、私はその直前に、ベルギーで開かれるエリザベート王妃国際音楽コンクールにエントリーを済ませたばかり。
自分のこれまでのペースでは、国際コンクールに挑むのは年に1本ほどでしたし、エリザベートとショパンコンクールは、チャイコフスキー国際コンクールとともに、世界三大コンクールに数えられる大舞台。演奏するプログラムもまったく違うため、準備が間に合うだろうかという心配があったのです。
しかし、16歳から30歳までという年齢制限から、私が参加できるのはこれが最後のチャンス。またショパンというのはピアニストにとって、いつかは正面から向き合わなければならない作曲家でもあります。
30歳を迎える年にやってきたこの巡りあわせに、「だったら今、勉強し直してみては?」と背中を押された気がしたのです。