「コンクールでは、〈入賞したい〉と思って演奏すると念が入ってしまうので、とにかくベストを尽くすことだけを考えて過ごしていました」(撮影:木村直軌)
2025年、「世界三大コンクール」の一つに数えられるショパン国際ピアノコンクールで桑原志織さんが日本人最高位の4位入賞を果たし、話題を呼びました。凱旋ツアーを前に、コンクールの舞台裏とこれからの夢を聞きます。(構成:山田真理 撮影:木村直軌)

運命の巡りあわせに背中を押されて

ポーランドのワルシャワで開かれたショパン国際ピアノコンクールでは、一次~三次予選をソロで、ファイナルはオーケストラとともにコンチェルトを演奏しました。会場はショパンを愛する方々で満席。長丁場の演奏にもかかわらず真摯に耳を傾けてくださり、集中して演奏できたと思います。

コンクールでは、「入賞したい」と思って演奏すると念が入ってしまうので、とにかくベストを尽くすことだけを考えて過ごしていました。ですから結果発表も会場には見にいかず、「Congratulations!」とお祝いメッセージをいただいたり周囲の方に知らされたりして予選通過を知ることに(笑)。

本番を終えたら、すぐに次の練習……という生活を繰り返しているうちに、あっという間にファイナルまで進んだという感覚です。

じつは、ショパンの曲をオーケストラと演奏するのは初めて。ですから不安もあったのですが、リハーサルはスムーズに終わりました。とにかくオケの皆さんがあたたかく、円熟した音でサポートしてくださった。私も自然体で、音を重ねることができました。

ピアニストは孤独に練習する時間が長いものですから、ほかの楽器の方以上に、アンサンブルに対する喜びを強く感じるのかもしれません。心地よく音が溶け合い、演奏中はとにかく幸せを感じていました。

ファイナルで、約1時間かけて2曲を弾き終え、大きな拍手をいただいた瞬間は、なんと言葉にすればよいのでしょうね。私が最後の演奏者でしたし、私だけでなく、オケやスタッフの方々、会場のお客様も、コンクールを駆け抜けた満足感を共有していたと思います。嬉しいことに4位という順位をいただき、もう上出来すぎるくらいです。