鳥の歌は立派な文化

このように環境に応じて小鳥は歌を変えて伝えています。ある辞書によれば「学んで伝えていく行動の様式が文化」だとありますから、鳥の歌は立派な文化だと僕は思いますね。

小鳥は歌を学べますので、名人の歌を聞かせると、歌の上手に育ちます。そこで小鳥をヒナの時から飼い、名人の側に置いていい歌を聞かせる。こうして育て上げたものを持ち寄り、「鳴き合わせ会」を開いて、同好の士の間で成果のほどを競い合う。こんな遊びが江戸時代から戦前まで行われていました。現在では野鳥を捕まえるのは法律で禁止されていますから、もうなくなりましたが、ウグイスをはじめ、メジロ、ヒバリ、コマドリなどの鳴き合わせ会がありました。

ウグイスの場合、お寺を借りて会をやります。城下町にはお寺がずらっと並んだ寺町がありますね。そのお寺の一軒一軒に籠を一つずつ置き、聞き手は順繰りにお寺を巡っていきます。ウグイスは縄張りを持ちますから、こんなふうに鳥を離ればなれにして置く必要があるんです。

鳴き合わせ会ではウグイスの籠を、一回り大きな箱に入れます。箱は蒔絵をほどこしてあったりする豪華なもので、箱の壁の一部が薄くなっています。ウグイスが鳴くと、その声に共鳴して箱が震えます。ちょうどギターの胴の役目をするのがこの箱です。箱の中に入れると、ウグイスはより良い声で鳴くと言われています。いわばお風呂の中でうたっているようなもので、ウグイスも気持ちよくうたえるのかもしれません。こうして、お寺で「法法華経」と法華経を賛美する。まことに風雅な遊びでした。

※本稿は、『すごい生きもの春夏秋冬』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。

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