玉袋 小説にしても、映画にしても、もちろんプロレスにしても、若い頃に夢中になったものに、50代になってもう一度触れ直してみると新たな発見がいっぱいある。若い頃に気づかなかった妙味が理解できるようになっているんですよ。
毒蝮 それが一流の芸術の持つすごみだよな。その作品に触れる時期、年代によって、いくつもの表情を見せてくれる。風雪に耐えることができるのが、真の芸術ってもんだよ。
玉袋 なぜそんな心境になれたのかといえば、人生経験を積んで50代になったことが大きいですね。つまり、「年齢」が「物語」を補完できるようになったということです。だからこそ、いまから新しいことをはじめるよりは、既に手にしているものをもう一度見直してみることって、意外と大切な気がしますね。
牛の反芻じゃないけれど、新しいことよりも、既に経験したことをもう一度じっくりと味わい直す。そのうえで、新しいことをはじめても遅くない。人生という限られた時間のなかで、そのほうが幸せになれるんじゃないのかな。そして、それは趣味に限らず、仕事においてもいえるような気がしますよ。
毒蝮 例えば?
玉袋 仕事だって趣味と同じ考えでいいんじゃないかという気がします。さらなるステップアップを目指して、新しい資格取得のために努力するのはとても立派なことですよね。でも、「新しいなにか」を獲得する前に、もう一度「自分はなにを持っているのか?」という「人生の棚卸し作業」をするのも、50代にもなれば大切になってくるはずなんです。
自分では気づいていない、50代には50代にしか持ち得ない武器や味わいがきっとあるはずだから。新しいことは次の世代、若い世代に託して、俺たちは俺たちが持っている武器で仕事に臨んだほうがいいし、むしろ、そのほうが勝ち目はあると思うんです。
※本稿は、『愛し、愛され。』(毒蝮三太夫、玉袋筋太郎:著/KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
『愛し、愛され。』(毒蝮三太夫、玉袋筋太郎:著/KADOKAWA)
昭和101年記念対談! 卒寿・還暦目前のふたりが語り尽くした人生のこと。
生きづらさを感じる現代に、戦前生まれで卒寿を目前にした「生けるレジェンド」毒蝮三太夫と、還暦を目前にした「時代遅れな昭和の粋芸人」玉袋筋太郎が、世代を超えて最強のタッグを組んだ。






