舞台、映画、ドラマにと幅広く活躍中のミュージカル俳優・市村正親さん。私生活では2人の息子の父親でもある市村さんが、日々感じていることや思い出を綴る、『婦人公論』の連載「市村正親のライフ・イズ・ビューティフル!」。第20回は「《芸の父》との思い出」です。(構成:大内弓子 撮影:小林ばく)
チャーミングな師
僕には《芸の父》と呼んでいる人がいます。新国劇の名優・島田正吾さんです。お目にかかったのは島田先生が89歳のとき。山川静夫さんが企画しておられた三越劇場でのトークショー「山川静夫名人劇場」に、先生と僕が呼ばれたんです。
もちろんそれまでも芝居は拝見していたけれども、そのときが初対面。島田先生が一人芝居『白野弁十郎』の大詰めのシーンを披露して、僕が、「市村座」でやっていた『音楽講 ああ無情 レ・ミゼラブル』をやりました。
そのあとのトークショーでは、『国定忠治』の演技を先生が僕に伝授するコーナーがあってね。
僕が忠治になって「赤城の山も今宵限り、かわいい子分のてめえたちとも別れ別れになる門出だ」と言うと、「『てめえたち』じゃない。子分はたくさんいるんだから、『(見渡しながら)てめ~え~たち』なんだ」と言われて。よく「台詞は歌え、歌は語れ」と言うけれど、それが身に沁みる教えでした。