<今月のひとこと>

 

忘れられないのは、『荒川の佐吉』の一人芝居を終えたあとの楽屋での姿です。「市村くん、こんな芝居を一人でやるもんじゃないよ」と、ひーひー肩で息をしながらおっしゃっていた。それが90歳超えていたときですからね。現在77歳の僕はまだまだ頑張らなくちゃと思います。

先生は年に一度、一人芝居の舞台に立っておられたんだけど、カーテンコールで、「今年はダメかと思ったけどなせばなる。できれば一人芝居を99歳まで続けていきたい。最後にやる演目も決めている」ともおっしゃっていました。

その一方で、「この歳でいつまで芝居ができるかわからないけど」と弱音を吐かれたりすると、僕の斜め後ろに座って観ておられた緒形拳さんが、「そんなことない!」と声をかけられたので、僕やほかのお客さんもそれに続いて励ましてね。

ただ、本当にいつ何が起こるかわからない。それが人生だから。先生も98歳で亡くなられました。遺志を継ぐというのでもないけれど、近いうちに絶対、僕がやりたいと思っています。「島田正吾を偲ぶ 一人芝居『白野弁十郎』」を。

【関連記事】
市村正親 忘れられない、西村晃さんの付き人をした3年間。何もかもが刺激的だった1年目。でも2年目になると…
市村正親「喫茶店、鉄板焼き、クラブ…足繁く通った店のママさんたちにかわいがってもらえたのは、母からの〈ある教え〉があったから」
市村正親が青春を過ごした舞台芸術学院が3月で閉校。同期54人で俳優を続けているのは…「僕は運がよかったのと才能と(笑)、何よりやっぱり努力」