忘れられないのは、『荒川の佐吉』の一人芝居を終えたあとの楽屋での姿です。「市村くん、こんな芝居を一人でやるもんじゃないよ」と、ひーひー肩で息をしながらおっしゃっていた。それが90歳超えていたときですからね。現在77歳の僕はまだまだ頑張らなくちゃと思います。
先生は年に一度、一人芝居の舞台に立っておられたんだけど、カーテンコールで、「今年はダメかと思ったけどなせばなる。できれば一人芝居を99歳まで続けていきたい。最後にやる演目も決めている」ともおっしゃっていました。
その一方で、「この歳でいつまで芝居ができるかわからないけど」と弱音を吐かれたりすると、僕の斜め後ろに座って観ておられた緒形拳さんが、「そんなことない!」と声をかけられたので、僕やほかのお客さんもそれに続いて励ましてね。
ただ、本当にいつ何が起こるかわからない。それが人生だから。先生も98歳で亡くなられました。遺志を継ぐというのでもないけれど、近いうちに絶対、僕がやりたいと思っています。「島田正吾を偲ぶ 一人芝居『白野弁十郎』」を。
