老いた自分を労り、可愛がってあげましょう

家電製品だって10年もたてば、経年劣化で不調が出るのはあたりまえ。ましてや、相談者さんの喉は、70年以上も一生懸命働き続けてきてくれたのです。「なぜ痰がとまらないのだろう?」と思い詰めるのではなく、「今までご苦労さま」と、自分の体を労って、もっと可愛がってあげましょう。

お薬もきちんと飲み、できることはすでにやっていらっしゃるのですから、挑戦したかった趣味を始めたり、近所にできたカフェに出かけたり、話題の映画を観に行くなどしてみてはどうですか? 「痰が出ているからできないこと」は思ったほど多くないかもしれません。

少し話はズレますが、ある医師が「痰は心の涙」と言いました。この医師は、何らかの精神的なストレスを抱えている子どもたちの健康状態を診察していたところ、心の傷が深い子どもほど、喘息や痰に悩まされることが多いと気づいたそうです。つまり、精神的なストレスが痰という形になって表れているんですね。

相談者さんも、もしかしたら何らかのストレスや不満を抱えていらっしゃるのではないですか? 今一度、自分の心と向き合ってみると、何かしらの気づきがあるかもしれません。

老年医療を専門とする私の経験から言えば、70代以降になると、どんな人でも、年々、体の状態が衰えていきます。いくら健康に気をつけていても、これから、さらに悩ましいことやできないことが増えていくものです。

でも、残り時間は限られている。だったら、毎日、悩んでばかりいるのはもったいないと思います。痰の悩みは脇に置き、今のうちに、自分の好きなこと、やってみたいことに思い切りトライしてみてはいかがでしょう。ほかの悩み――多少の関節痛や筋力低下、物忘れ、難聴なども同じです。

シニアになったら、100点を目指さなくてもいいのです。日々、60点でよしとする。多少の不調はあるけれど、今の自分の体を愛し、ささやかな楽しみを見つけながら日々を過ごしていく。そんなふうに年齢を重ねていくことができれば、心身ともに穏やかに「老い」と共存していけるのではないでしょうか。


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