52年間がなかったかのような清々しさ

周りで認知機能検査のために答案用紙にカリカリとボールペンの音をたてる皆が皆、親しい友人のように思えた。

この試験のおかげで私は社会の外へかけられた橋の袂に立ち、橋を渡るには未だ早しとテストを受ける皆の姿に出会うことができたのだ。

財津和夫
(写真:『大丈夫さ 私の履歴書』より)

この受験者全員と同一体験をすることで私の心は一方的ながら社会的共感を味わっていた。そう、小さくともひとつの社会である。なんと私は特殊でなくなったのだ。

何だか嬉しくなった。世間知らずでなくなったような、子供から大人になったような、52年間がなかったかのような清々しさだ。