この体験を作品にしなくては――と感じてアルバムを作り始めたときは、まだ靄(もや)の中にいて、自分がどこにたどり着くのかわからなかったように思います。でも今こうして、ありのままの私の、きれいごとなしの体験を詰め込んだアルバムとして、お届けできる形になりました。

日本での音楽活動をすべて停止し、夫と息子とともに渡米したのは2014年。当時の私は、ありがたいことにヒット曲にも恵まれていましたが、シンガーソングライターとしては、直感で音楽を作り続けていくことに行き詰まりを感じていました。

音楽的な引き出しを増やしたかったし、ミュージカル音楽を書けるようになりたいという夢もあった。それでアメリカの音楽大学に入学し、本格的に音楽理論を学ぶ道を選んだのです。

活動をやめることは決して簡単ではなく、一緒にずっと走ってきたスタッフたちをはじめ、周囲にはとても迷惑をかけてしまいました。2歳半の息子を連れてのアメリカ暮らしとなるわけで、家族も大変だったと思います。今振り返っても、周りの人たちには感謝しかありません。

渡米後、最初の5年くらいは勉強漬けの毎日。フルタイムで通う大学のほか、夜間のセミナーやオンラインのコースを通年でいくつも受講して、ひたすら音楽に向き合っていました。