洗濯が終わってピーピーと鳴った。干しに行こうとしたら、麻子がなにか言いたげな表情だ。
「どうしたの?」
「昨日の話、やってみようかな、と思って」
「ほんと? よかった」
「石上露子にちょっと興味が出てきて」
「そう。じゃ、早速、白鳥さんに連絡してみるね」
 スマホをポケットから取り出そうとして、迷った。こんな大切なこと、メールや電話一本でいいのだろうか? 会って直接礼を言ったほうがいいのでは?
 しばらく逡巡していると、麻子が怪訝な顔をした。
「お母さん、どうしたの? 顔が真っ赤」
「え? あ、ああ。麻子がやる気になってくれて嬉しくてたまらないから……」
 違う。もちろん娘のことは嬉しい。でも、私が今、頬を赤らめているのは霧に会える口実ができたからだ。
「木綿子、おい、木綿子。なにやってる。とっくに洗濯は終わってるだろう。さっさと干しに行かんか」
 奥から怒鳴り声が聞こえてきた。びくっと麻子が身体を強張らせたので、ぽんと軽く腕を叩いてやった。父のことなど無視して明るく話す。
「朗読劇のこと、まずはお母さんが詳しいことを聞いてくる。できるだけ麻子に無理がかからないようにしてもらうから。安心して」
「ありがとう、お母さん」
「いいの。じゃ、洗濯物、干してくるね」
 洗濯物カゴを持ち上げ、勝手口に向かった。カゴの中はほとんどが父の汚れ物だったが、いつもよりもずっと軽く感じたのだった。