シャワーを済ませて洗面所の鏡に全身を映してみた。
死にたくなった。たるんだ腹、萎んだ乳房、垂れた尻。ハリのないかさついた肌。女性としての魅力など微塵もない。醜い身体だ。そして、化粧を落とした顔は本物の皺くちゃのお婆さんだ。
わかっている。モデルでも芸能人でもない。日頃からジムやエステに通って気を配っているわけでもない。それどころか、日々の生活に追われた六十歳なのだからこんなものだろう。
霧はきっとがっかりするだろう。私を抱こうと思ったことを後悔するに違いない。でも、優しいからきっと顔には出さない。
不本意な努力をしようとする霧を想像して、今すぐ逃げ出したくなった。
せめて化粧だけでもしよう、と思って気付いた。化粧道具の入ったポーチはバッグの中で、洗面所を出て霧のいるベッドルームに行かなければならない。結局、皺とシミだらけの素顔のままで霧のところに行かなければならないのだ。
私はバスローブをまとい、洗面所を出た。
バッグは窓際のテーブルの上だった。その横のソファには霧がローブ姿で座っている。いつの間に買って来たのか、缶ビールを飲んでいた。
「もうすこし飲みませんか? チューハイやらいろいろ買ってきた。冷蔵庫に入ってます」
いきなり話しかけられてパニックになった。
「……あの、お化粧を……」
「ああ、そうか。じゃ、待ってます」
霧が笑って、すこし済まなそうな顔をした。化粧をする時間をもらってほっとした。たとえ霧が化粧なんてしなくていい、と言ったとしてもすっぴんでは落ち着かない。
