手早く化粧をして部屋に戻った。冷蔵庫を開けると、ビールが三本、チューハイが二本、ハイボールが二本、入っていた。
「こんなにたくさん」
 思わず呆れて笑うと、霧はすこし嬉しそうだった。
「木綿子さんは酒豪かも知れないから」
「まさか。たしなむ程度です」
 ソファに座ってビールを飲んだ。ワインとビール。一日に両方飲んだのはこれがはじめてだった。
 霧はなにも言わない。だが、ふいに立ち上がってカーテンを開けた。窓一杯に夜景が広がる。大丈夫なのか、と霧の表情をうかがった。すこし青ざめているように見えた。
 私も黙って窓の外を見た。海に浮かんでいるのは関空の灯りだろうか。じっと見ていると、光の点が動いて、飛行機が飛び立ったように見えた。
 ふっと思い出した。
 白鳥は哀しからずや。空の青、海のあをにも染まずただよふ――。
 きっと霧は空を飛んでどこかへ行ってしまうだろう。だって白鳥なのだから。私はきっと残される。空を飛べないから。
 そんなことを考えていたら、ふいに霧が呟いた。
「……開かない窓なら安心できる」
 霧が立ち上がって私をベッドに誘った。
 

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