性自認が男というだけで

だが、今から考えるとこれはまったく論旨不明のお願いで、私の心の中には、光が学ランを着て男になってしまうことへの戸惑いとか否定的な気持ちがあったのかもしれない。

光は、自分を男と言うが、そんなに荒々しいとか猛々しい雰囲気は持っていなかった。確かにショートヘアで、スカートは穿かないし、男子とばかり遊んでいるのは事実だが、言ってみれば可愛らしい子である。光の容姿を見て、男だと思う人はいないはずだ。

『性別違和に生まれて-父と子で綴った23年』(著:松永正訓/中央公論新社)

性自認が男というだけで、見た目はボブカットの女の子である。それがいきなり学ランを着るということに私の思考はついていっていなかったのである。

中学校への手紙には2番目のお願いを採用してほしいと書いたが、妻は最初から1番目のお願いの方がいいと割り切っていたとあとになって知った。妻は私の中途半端な要望に半ば呆れつつ、私の気持ちを汲んで2番目のお願いを要望することに同意してくれたのだろう。