学ランが届いた

そして学校からは自宅に何度か連絡が入り、結論として1番目のお願いの通りに受け入れますという返事が来た。完全に男子として扱うので、もちろん制服も学ラン。トイレは校舎の奥にほとんど誰も使っていないトイレがあるので、そこを男女兼用として光に使ってもらうということになった。

そうか。そうなるのか。光は男になるのか。私は、光の性別違和に対して可能な限りサポートしてやろうと思いながら、女性性を失う寂しさも感じていたことを初めて思い知らされた。

(写真提供:Photo AC)

自宅に学ランが届いた。光は早速学ランを身につけた。妻がうれしそうに言う。

「似合ってる。カッコいいよ」

私は「記念に写真を撮ろうよ」と光に声をかけた。光は写真を撮られることが嫌いでいつも断られる。でもこのときは「いいよ」と言ってくれた。

ファインダーに光を収め、何枚もシャッターを切った。うれしそうに、はにかむように、表情を緩める光。確かに私は似合っていると思ったし、カッコいいと思った。と同時に光の笑顔の中に不安定さのようなもの、あるいは危ういものが滲んでいるような感覚になぜか囚われた。私は、自分のそういった直感みたいなものが杞憂に終わればいいなと心中願った。