深夜はさまざまな事態が持ち上がる
とはいえ、私は立ち食いそばの経験はない。それでもいいのかと聞くと、
「まずは昼間働いて仕事を覚え、慣れてきたら深夜を担当してください」
近藤氏はこう言って深々と頭を下げ、
「健康面は大丈夫ですか?」
と聞いてきた。大丈夫と答えると、さらに、
「病気を抱えていませんか?」
と言う。彼が健康面を気にする理由は面接の終盤で判明した。それは後述する。
深夜勤務はワンオペ、つまりスタッフ1人だけの作業となる。理由は売上額から計算して、2人分の給料を払う余裕がないからだ。2人分払ったら、赤字になってしまうのである。
当然ながら、深夜はさまざまな事態が持ち上がる。たとえば酔っぱらいが「味がまずい」とクレームをつけてくるケース。
「深夜のお客さまはお酒のせいもあって、支離滅裂の人が多い。何でもいいから、文句を言いたいみたいです」
そばで満腹になった酔客が食後に眠ってしまうこともある。その場合「お客さま、起きてください」と注意するのはいいが、怒鳴ってはいけない。あくまでも耳元でささやく程度にとどめる。客の肩をゆすったり叩いたりなど体に触れる行為は厳禁だ。
「警備会社に連絡し、警備員に来てもらいます。出動した警備員がお客さまを店外に移動してくれるので安心です」
客が鍵をかけたままトイレで熟睡することもある。その場合も警備員がドアを開けて客を店外に連れ出してくれる。
