好条件なのに、なぜ人が来ないのか

時給は昼間は1300円だが、深夜は割り増しで1625円に跳ね上がる。

午前3時から45分間休憩が取れ、その間に店の料理を食べていい。

(写真提供:Photo AC)

「ワンオペなので、外の看板の灯りを消し、店を一時閉店にして休憩します。何を食べてもかまいません。そばとカレーのセットでもいいし、かつ丼のセットでもいい。お腹が減っていたら大盛りを食べてください。すべて無料です」

なんと無料食べ放題! しかもうれしいことに休憩中も時給が支払われる。つまり丸々8時間分のギャラがもらえるのだ。

単純計算でひと晩(8時間)で1万3000円稼げることになる。回転寿司よりずっといいではないか。

そんな好条件なのに、なぜ人が来ないのか。疑問をぶつけると近藤氏は、

「牛丼屋でのことが影響しているようです」

と教えてくれた。

牛丼屋でのこととは名古屋市のすき家で起きた死亡事故だ。2022年1月、深夜ワンオペのバイト女性(58)が勤務中に死亡。死因は心筋梗塞とされた。女性は午前5時半ごろ厨房で倒れたとみられている。交代のために出勤してきた従業員によって発見されたのは3時間も経過した8時40分だった。ニュースになったから覚えている読者も多いはずだ。

中高年や高齢者には「何かの発作で倒れたとき、助けてくれる人がいるか」と心配する人が少なくない。かくいう私もこの1年ほど後頭部に鈍痛を感じ、病院で診察を受けたことがある。厨房の奥は客席から見えにくいものだ。昏倒し誰も気づいてくれなかったら、死の危険性が高まる。だから深夜ワンオペは敬遠されるのだ。前述したように近藤氏が私の健康状態を気にしていたのはそうした事情だったのである。