立ち食いそば残酷物語

私の顔に困惑の表情が浮かんだのだろう、近藤氏は、

「当チェーンには60代の人が3人働いてます。誰でもできる仕事です」

「深夜とはいえ、昼間に比べてそれほどハードということはないんです」

とフォローにかかった。

彼には申し訳ないが、私は自分の健康と命が気にかかる。60代の深夜バイトは命がけと考え、後日、丁重に断らせていただいた。

時間が余ったので、立ち食いそば業界についてさらに話を聞いた。そば粉の重量が30キロあるため、不用意に持ち上げるとぎっくり腰になるそうで、近藤氏は、

「私もなりました。ぎっくり腰は一度やってしまうとクセになる。たぶん完治しません」

深夜のワンオペだと店の食材をこっそり持ち帰る不届き者がいるのではないかと思うが、近藤氏によるとそうした犯罪的な行為は棚卸しのときに発覚する。同業の立ち食いそばチェーンでは防犯カメラの映像から食材を盗んでいた犯人が見つかり、警察沙汰にはしなかったもののクビにしたケースがあるという。

また、立ち食いそば業界は会社によって待遇が大違いで、サラリーマンの間で名前が通っている某社は、

「正社員でもボーナスがわずか1万円。良くてもせいぜい10万円です」

まさに立ち食いそば残酷物語。ワンオペの危険性も相まって、面接は自分の健康状態などを勘案して決めなければならないと肝に銘じたのだった。

※本稿は、『年金だけじゃ生活できない!「定年バイト」奮戦記』(秀英書房)の一部を再編集したものです。

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60歳を過ぎても子育てが終わらず、働き続けなければならないシニア労働者が急増。「息子が仕事を辞めて実家にひきこもり、生活費を稼ぐために…」

年金だけじゃ生活できない!「定年バイト」奮戦記』(著:林山翔平/秀英書房)

現在65歳の著者が数々のバイトの面接に潜入取材を敢行!

60代以上の年金世代に捧ぐ、怒り、ユーモアと皮肉を交えて綴るエンターテインメント・ドキュメンタリーエッセイ。