鹿島建設 建設現場の様子
2010年、首都圏中央連絡自動車道 裏高尾橋工事の際の集合写真。前列左から2番目が須田さん(鹿島建設月報「KAJIMAダイジェスト:ザ・サイト」より。写真提供:鹿島建設)
「ドボジョ」とは、土木業界で働く女性や土木分野を学ぶ女子学生を指し、2000年代後半から、女性の活躍を広げるために広まった言葉です。道路・橋梁の設計、トンネルやダムの建設管理、河川の整備や防災事業など「インフラメンテナンス」に携わる女性たちがいます。長らく男性中心の職場というイメージの業界ですが、高齢化に伴う人材不足などから、女性技術者の採用・育成が進められています。とはいえ「トンネル内では女性が作業できない」というルールも残っているとか。「ドボジョ」として46年間鹿島建設で勤務するパイオニア、須田久美子さんにその仕事の魅力や課題、後進への思いを聞きました。
(取材・文:譽田亜紀子 撮影:本社 奥西義和)

高速道路の現場で天職に出会う

「土木女子のパイオニアが鹿島建設にいる」と聞き、話をうかがうために訪れた会議室。そこでにこやかに出迎えてくださったのが同社土木管理本部 土木企画部人事・教育グループ(ダイバーシティ推進担当)専任部長の須田久美子さんだ。赤いメガネがとてもお似合いの彼女から発せられた「今日は作業着が良いかなと思って」というチャーミングな言葉に、取材現場は一気に和やかな雰囲気に包まれた。

インタビューに答える須田久美子さん
当日は「ドボジョらしい服装で」と会社の作業着で取材を受けてくれた須田さん

「土木女子(ドボジョ)」とは土木系の仕事や学問に携わっている「土木好きの女子」を示す呼び名だが、この言葉は、「土木系女子」だけでなく、「作業服姿にヘルメットをかぶり、土木・建築の現場で働く女性達」すべてを表す言葉として定着しつつある。土木分野は鉄道、道路、橋、トンネル、港湾、空港、河川、ダムなどのインフラの整備を対象とし、自然災害等の社会課題の解決および環境の創造・維持発展のための研究・企画・設計・建設・維持・更新を含む工学だ。

女性の進出が遅れている分野として近年注目を浴びている。そのパイオニアとして須田さんは多くのメディアで取り上げられ、業界の魅力を発信し続けている。

須田さんと土木の出会いは、大学の進学先を考えた高校生のとき。何気なく見ていた大学パンフレットに掲載されていた綺麗なアーチダムの写真に心を奪われた。

「美しい写真の下に〈土木工学科〉って書いてあって、ここに入ればこんなダムを造る人になれるんだ、と思ったんです。実際に入ってみたら、そんなことに興味を持つ女性はあまりいなくて、そもそも学科に女性はほとんどいなかったのですが」と笑う。

無事に土木工学科に入学した須田さんだったが、1年生の夏休みのアルバイトで性別の壁が立ちはだかった。当時、大学教授の紹介で「土木の仕事」をアルバイト経験させてもらえる仕組み(現在のインターンシップに相当)があったが、どこも「男子学生に限る」という募集のみ。諦めきれない須田さんは担当教授に「女子学生も受け入れているところを探してください」とお願いし続け、3年生の夏休みに高速道路の工事現場で念願のアルバイト経験をする。

「当時、現場には、北国からの出稼ぎの人たちが多くいたんです。それも家族同伴で。今ではそんな現場はありませんが、奥さんたちが鉄筋の曲げ加工をして、それをご主人たちが現場で組み立てたり。10時と15時にはお茶の時間もあって、休憩の時に私も皆さんに混じって和気藹々といろんな話をするのがすごく楽しくて」

インタビューに答える須田久美子さん
アーチダムの美しい写真を見て「これを造る人になりたい」と

ここで2ヵ月半のアルバイトをした須田さんは、大学の授業ではけっしてわからない現場の臨場感を経験する。

「施工の計画図面はあるわけですが、図面を渡すと、技能者の皆さんがあれこれ協議しながら手を動かして、どんどん出来上がっていくんですよ。紙の上の計画が目の前で形になっていく様子にワクワクして、これが私の天職なんだと強く思った体験でした」