舘 仕立て職人に、「もうちょっと襟をこうして、ボタンはこれ、パンツはこんな感じに」と、細かく指示を出しただけ。
吉田 仕立て職人の彼、汗だくになってましたよ(笑)。一着作ってみたら、もうとんでもない沼だとわかりました。かっこいい大人の嗜みですね。
舘 僕は芝居はけっこういい加減だけど、洋服にはものすごくこだわるんです。(笑)
吉田 舘さんは、演劇畑の俳優から見れば、別世界に住んでいるような存在で、高倉健さんや若山富三郎さんと同じく生粋の映画スター。おそらく演技のメソッドも経験も、僕らとは全然違うと思うんです。舘さんとお芝居したのは初めてだったので、貴重な経験になりました。
舘 いやいや、僕はセリフを言うだけで精一杯。よくぞ50年も続けてこられたなと思います。たぶん歴代の監督たちは、「こいつは俺の作品に出たら、もうちょっとうまくなるだろう」と思いながら付き合ってくれてたんじゃないかな。
吉田 何をおっしゃってるんですか。でも、そんなふうに言えるのが、またかっこいいんですよ。
舘 でもね、実際のところ、昔の自分と今を比べると、ちゃんと台本を覚えるようになったなと思います(笑)。昔は現場で《NG大賞》と呼ばれるくらい、全然セリフを覚えなかった。東映時代に始まり、「あぶない刑事」シリーズでお世話になった村川透監督は、ワンシーンをワンカットで一気に撮るんですね。
吉田 それは緊張感がある……。